野菜メモ【そら豆】編

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そら豆の知識

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由来

そら豆の原産地は北アフリカや西南アジアとされています。そら豆は歴史ある作物で古代エジプトやギリシア、ローマで食べられていました。また、トロイ遺跡から化石が出土しており、世界最古の野菜とされています。人間との付き合いは4000年にもなります。当時から重要な栄養源とされていました。
日本へは奈良時代(
8世紀)にインドの僧から伝来したとされています。現在のそら豆は、明治時代になってからヨーロッパやアメリカの品種が導入され、それらの品種が礎となっています。名前の由来は、さやが空に向かって成長することから「そら豆」と呼ばれるようになったという説が一般的です。とてもポジティブな感じがして素敵です。

主な生産地

そら豆の主な収穫量は鹿児島県が日本全体の30を占めています。次いで千葉県13%、愛媛県8%と続きます。鹿児島県は、水はけの良い火山灰土壌で、大粒で甘みがあり,ホクホクした食感が魅力のそら豆が生産されています。かごしまブランドとして認定されているものもあるようです。鹿児島県で一度食べてみたいですね。

そら豆のお話『わらと炭とそら豆』

『わらと炭とそら豆』あらすじ

お婆さんが、そら豆を煮ようと鍋にたくさん入れると、1粒が鍋の外に転がって土間に落ちた。次にお婆さんは、かまどに火を着けるためわらを一掴み取ったが、1本のわらが手から滑って土間に落ちた。火がついて薪が燃えると、ぽんとはぜて赤く焼けた消し炭が1個飛んで土間に落ちた。

「危なく煮られるところだった」とそら豆が言った。「僕も危なく燃やされるところだった」とわら。「僕も、あのまま燃やされたら灰になるところだった」と炭も言う。ここにいたらどうなるか分からないから旅に出よう、と3人の相談がまとまり、わら・炭・そら豆は家の外に出て野原を歩いて行った。しばらく行くと小さな川がある。どうしよう、これでは進めない。3人は考えたが、わらが、自分が横たわって橋になるから、君たちが渡って、向こう岸についたら僕を引き上げてくれ、と提案した。そら豆と炭も賛成し、さっそくわらは横になって小川の両岸をつないだ。最初に炭が渡ったが、ちょうど真ん中あたりまで来た時、流れる水が怖くなって、つい立ちすくんで止まってしまった。まだ赤く焼けた消し炭がわらの上で動かなくなったからたまらない。わらに火が燃え移り、二つに折れて水に落ちてしまった。炭もいっしょに落ち、ジュッと音を立てて沈んだ。

その様子を見ていたそら豆は、おかしくてたまらなくなり、腹を抱えて笑い転げた。あまりに笑い過ぎたものだから、とうとう腹が破裂してしまった。そこへ1人の仕立て屋が通りかかった。仕立て屋は親切な人だったので、そら豆の破れた腹を糸で縫い合わせて助けてやった。けれども、たまたま黒糸しか持っていなかったので、黒糸を使った。それ以来、そら豆には黒い縫い目が付くようになったそうである。

引用元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%8F%E3%82%89%E3%81%A8%E7%82%AD%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%82%89%E8%B1%86

このお話はグリム童話の『わらと炭とそら豆』です。そら豆のおはぐろ(黒い筋のところ)にこんなエピソードがあったとは知りませんでした。日本昔ばなしでは『そら豆の黒い筋』という名前で放送されたようです。他人の不幸を笑ってはいけません。でも、笑いすぎて腹が破れても助かるそら豆はすごく幸運ですね。

そら豆を食べる

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栄養素

そら豆には次の栄養素が入っています。

〈タンパク質〉

体を作る材料になる。

〈食物繊維〉

腸内環境を整え、便秘予防に効果的。

〈ビタミンB群〉

エネルギー代謝を助け、疲労回復に役立つ。

〈鉄分〉

5大栄養素のミネラル。血液中でヘモグロビンの構成要素として体中に酸素を運搬する。

旬な時期

そら豆の旬は5月~6月です

目利き

おいしいそら豆の特徴です。目利きを覚えてホクホクの甘いそら豆を食べましょう。新鮮なそら豆をはおいしさで感動できます。

  • さやの色が鮮やかな緑色でツヤがあるもの
    →変色していると時間がたっているので注意
  • 短いウブ毛があるもの
    →超新鮮です。嬉しい!
  • 実のふくらみがさやにあらわれているもの
    →しっかりと実が成長しています。

おいしい食べ方

鮮度のいいそら豆の塩ゆでは最高においしいです。さやから出すと一気に鮮度が落ちてしまいます。なるべく収穫したてのそら豆をシンプルに塩ゆでして食べると、ホクホクとした食感に素材本来の甘みとほのかな苦みが楽しめます。

【そら豆の塩ゆで】

◎必要なもの

  • 新鮮なそら豆

◎理想的な作り方(鮮度重視)

  1. 水に塩を適量いれ、お湯を沸かす
  2. そら豆を畑から収穫
  3. そら豆をさやから出す
  4. 沸かしたお湯で2分程度茹でる

シンプルだから、そら豆がもつおいしさが感じられて、本当においしいです。

保存方法

そら豆は鮮度が落ちやすい野菜なので、購入後はできるだけ早めに調理するのが理想的です。

数日保存する場合

さやごとポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存。

長期保存する場合

保存袋に入れて冷凍。
さやを付けたまま冷凍したほうが風味が残ります。使い勝手や冷凍庫のスペースを優先したい場合は剥いた豆だけ冷凍もできます。

そら豆を栽培する

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好む環境

そら豆を育てる際の好ましい環境です。場所を選びの参考にしてください。

  • 涼しい
  • 日当たりが良い
  • 水はけが良い

育て方

  • 植える時期
    種を植える時期は9月から11月にかけて行います。霜の降りる前に発芽させることを目指します。暑さには弱いのであまり早く植えすぎるのもよくありません。
  • 植え付け
    ポットに植えることで鳥などの被害を防ぐことができ、また元気な苗を選別できるメリットがあります。また、直まきする際は2粒まきをして、発芽しなかった場合のリスクに備えます。2粒とも芽が出た場合は元気な方を残して、間引きます。

≪植えた時の記録があるので参考に見てください。≫
野菜栽培ダイアリー【そら豆を植える】

私は直まきをしています。

  • 水やり
    発芽までの間に水を与えすぎると豆が腐ってしまい発芽不良になるので与え過ぎは注意です。また、発芽後も加湿を嫌うので、しっかり土が乾くのを待って水を与えます。

病害虫について

  • 病気について
    そら豆はモザイク病やえそモザイク病、さび病といった病気になることがあります。風通しを良くして加湿にならない環境を保つことが予防になります。
  • 害虫について
    そら豆はアブラムシに寄生されやすいです。アブラムシを媒介に病気が広がることがあるため防虫ネットや殺虫剤を使って対策をします。また、窒素過多になるとアブラムシが発生しやすくなるため、直前に堆肥を使う場合は完熟肥料・腐葉土を使うほうが好ましいです。

自然科学から見たそら豆

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科名と分類

  • 学名:Vicia faba(ーちしゃ ふぁーば)
  • 科名:マメ科
  • 分類:真正双子葉類

構造

そら豆の構造です。


  • 地中に根を張り、土壌から水分や栄養素を吸収します。そら豆は、根に共生する根粒菌によって窒素を固定する能力があります。

  • 直立していて、葉や花を支える役割を果たします。

  • 複数の小葉からなる羽状複葉で、光合成を行いエネルギーを生産します。

    【羽状複葉(うじょうふくよう)】
    葉の形状の一つ。羽状複葉は中央の軸に沿って小葉が左右対称に配置されています。左右対称に葉が配置されており鳥の羽のように見えるため羽状と呼ばれます。
    また主軸の先端に小葉が付くものを奇数羽状複葉、つかないものを偶数羽状複葉といいます。そら豆は偶数羽状複葉です。
    羽状複葉の分類説明図

  • 白や紫の美しい花を咲かせ、受粉によって実を結びます。自家受粉または昆虫による他家受粉が行われます。
  • 豆莢(まめさや)
    花が受粉してできる果実部分で、中に複数の種子(豆)が含まれます。
  • 種子(豆)
    食用部分で、高い栄養価を持っています。

生理活性成分

そら豆に含まれる生理活性成分です。

生理活性成分:生体の生理機能に対して有効な成分
  • フィトケミカル
    植物由来の化合物。抗酸化作用や抗炎症作用があるとされますがまだ研究段階。そら豆にはイソフラボン、サポニン、ファイトステロールといったフィトケミカルが含まれる。
  • レシチン
    細胞膜を構成する成分。水と油、両方への親和性があり乳化作用がある。

成長サイクル

そら豆の成長サイクルです。

  1. 発芽
    種子を土に植えると、水分を吸収して発芽し、根と茎が伸び始めます。
  2. 成長
    茎が伸び、葉が展開し、光合成を行います。
  3. 開花
    成長が進むと花が咲き、受粉が行われます。
  4. 結実
    花が受粉すると豆莢が形成され、中に種子(豆)が成長します。
  5. 成熟
    まめさやが成長し、中の種子が成熟します。

生育条件

そら豆の生育条件です。


  • 日当たりの良い場所が適しています。
  • 土壌
    水はけの良い肥沃な土壌を好みます。
  • 温度
    適温は15〜20℃で、冷涼な気候を好みます。耐寒性は持っていますが高温環境では枯れてしまいます。

化学反応

そら豆が行う化学反応です。

  • 窒素固定からタンパク質の生成
    そら豆を含むマメ科の植物は窒素固定を行います。窒素固定とはマメ科の根に共生する根粒菌が空気中の窒素ガス(
    N2)を取り込み、酵素の働きによってアンモニア(NH3)へと変換します。この根粒菌によって生成されたアンモニアを使いそら豆はアミノ酸(タンパク質の基本構成単位)を生成し、たんぱく質を合成します。そら豆と根粒菌のような異なる生物種がお互いに利益を得る共生関係を相利共生の関係といいます。
相利共生の関係

根粒菌:そら豆に住み、そら豆が光合成によって作った炭水化物やミネラルをもらう。

そら豆:根粒菌が大気中の窒素から作ったアンモニアをもらう。

相利共生の関係図

そら豆と根粒菌のような相利共生の関係のおかげで空気中の窒素がアンモニアへと変わり、そのアンモニアがタンパク質へ変わっています。もちろん牧草を食べる牛も相利共生の関係から生み出されたタンパク質を得ています。豆からタンパク質を食べても、お肉からタンパク質を食べても、口に入れるタイミングが違うだけで、元をたどればマメ科の植物と根粒菌の関係で生み出されたタンパク質を食べています。小さな世界にすごく大きな力があります。改めて地球ってすごいと感じます。

おわりに

今回はそら豆のメモでした。小さなお野菜ですが、最古の野菜だったり、タンパク質を作ってくれていたり人間には欠かせないお野菜です。そら豆を食べておいしいと感じるのはもしかしたら人間の遺伝子に組み込まれた記憶かもしれません。遺伝子レベルで必要と感じるほどすごい野菜です。そら豆を食べて、そら豆みたいに上を向いてがんばりましょ~♪

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